オリンピック開会式の印象

前に紹介したエピソードを思い出し、屋根がおちないかどうか気になるので見る。たわいもない印象だが忘れないうちに。

  • 式典そのものはディズニーランド風を避けてヨーロッパ趣味になかなか美しくまとめてあった。入場行進は、それこそ名前も忘れている、あるいはまったく初耳の国の名前を知るための機会のようなものだ。今の中学、高校生はたいへんだなと思う。
  • フランスのTVでは複数の人間がああだこうだとコメントをつける。アフリカの国や島嶼国が出るたびに、フランスに限らず、いちいちここはどこの植民地だったというのを聞くと、あらためて、フランス人の地理の把握のシステムはこうなっているんだなと思う。
  • フランスの選手団は三色旗を持つ人間とギリシアの国旗を持つ人間が半々だと思ったら、実は裏表になっているというのをあとで知る。日本は日の丸はなく団扇。こういうのは日本だけかと思ったらスペインも扇でまったく同じアイディア。中にはまったく国旗を持たない国も。ドイツのようにごく普通の国旗をもってくる国々がもちろん大多数だが、いろいろな仕方でナショナリズム色をひかえめにという配慮をする国があるのを知る。
  • 行進の中で女性をどの位置につけるかも面白い。フランスは女性を先にたてるレディー・ファースト。ドイツは男性の列と女性の列をつくり前後に差がつかないようにしている。最近の流れではレディー・ファーストは時代遅れでフェミニストからは男女差別の慣習とまで言われる。この流れが浸透してきているドイツと「遅れた」フランスの差は食卓の振る舞いなどでもしばしば観察されるが、こういうところにも見られるのは面白い。日本の選手団はフランス型に見えた。アナウンサー(男性)は男女半々の日本の選手団の構成を紹介して、日本では「パリテ(男女同数政策)が守られている」と感心したように言う。フランスの選手団では女性は全体の3分の1ほどに見える。最近フランスはこの「パリテ parité」というのをやたら気にするようになってきた。ギリシアの選手が五輪旗を入場させたときに、アナウンサーは、女性が1人しかいないのにめざとく気づき、フィンランドだったら絶対こんな風なわけにはいかない、とコメントする*1
  • 観客から格別の拍手で迎えられる国がある。イラクパレスチナキプロスなど、政治がらみで。一方トルコの選手団の入場のときにこれらの国の歓迎の拍手のときとは違う異質な音でざわめきが大きくなる。あきらかに指(口)笛によるブーイングがあるもよう。両国の歴史、領土問題を考えれば驚くに値しない。コメンテーターは何も言わない。これについてニュースがどう扱っているかチェックすると、「観客席はキプロスのために熱狂し、不倶戴天の敵、トルコにはそっぽを向いた Les tribunes ont aussi vibré pour Chypre et boudé la Turquie, ennemi ancestral」(ロイター仏語版)、「トルコへの態度はかなり中立的なものだった。 Quant à l'accueil réservé à la Turquie, il fut assez neutre.」(AFP)、「トルコの選手団は観客から暖かく迎えられた選手団の一つだった Turkish athletes were among those given a warm welcome by the crowd.」(ロイター英語版)といろいろである。実際にスタジアムにいた人の話やトルコでニュースを見ている人に聞いてみたいものだ。この種の出来事は報道にも種々の主観的要素が働き一筋縄ではいかない。

*1:男女平等で今やフランスも感心する日本...と思いきや、id:flapjack さんのところでこんな無茶苦茶な話を知る 。「今時珍しい性差別の事実を発見!」。
個人的にはとりあえずこの会社は落とし前をつけてくれるまでしばらくボイコットに値すると決める(もともとあまり使ってないけど)。