セミラ・アダム事件

別件でネットを巡回していて、

ある男性の死 ちょっと、それって・・・
http://mezaki.blogspot.com/2010/05/blog-post.html

という記事に行きあたった。

今年の3月22日、エジプト航空で日本から強制送還中のアブバカール・アウドゥ・スラジュ(Abubakar Awudu Suraj)というガーナ人男性がエジプト航空機内で死亡した、事件に関してで、それをめぐる法務省の対応、国内外のメディアの扱いなどを伝える。


このことに関して思い出したのが、1998年にベルギーで起きた Semira Adamu 事件。ベルギーに難民認定を求めていた20歳のナイジェリア人女性 Semira Adamu (セミラ・アダム)が、認定を受け入れられず、強制送還となったとき、機内で死亡した事件だ。

英語だとこのあたりが、簡単に事実を伝える。

Semira の強制送還の問題は、送還以前からすでに人々の注目を集めていただけに、この死亡事故は人々に大きなショックを与えた。

このときの強制送還の任にあった警察官の行動の適法性、政府、特に内務省の対応をめぐって批判的世論が沸騰し、内務大臣が辞任する問題にまで発展した。さらにこれをきっかけに強制送還の際の対応についての報告書が国の諮問による委員会によってまとまめられた。

事件の起きた9月22日は、5年後、10年後にも追悼行事が行なわれている。

検索すると、この事件を扱ったページは、大部分がフランス語だが、それこそ読みきれないほどあり、この事件の波紋を伺わせる。

画像検索 : http://www.google.com/images?q=Sémira%20Adamu
当時の報道を伝えるベルギー国営テレビの動画記録 (2010年3月) : http://www.youtube.com/watch?v=3yJBLOX6XUk



セミラ・アダムの事件が、ベルギーの世論をゆるがすこれほど大きなものになったのは、人々の注意をひくようなセミラ・アダムをめぐるいろなファクター(二十歳の女性、強制結婚を避けるための出国と不法滞在 etc)、当時のベルギーの国内事情が複雑にからみあってのもので、今回の日本の件と単純な比較はできない。同様な強制送還時の死亡事故はフランスでも起っており、それほどの大事件とならずに、新聞やTVの一つの記事として過ぎていく。

しかし、日本のこの事件が国外、特に欧州にで報道されるとき、多くの人々がベルギーのこの事件を思い出しひそかに引き合いに出すであろうことは、想像に難くない。この種の問題に特別なかかわりのない、そして当時隣国のフランスにいた私でさえ記憶の隅をつつかれたくらいであるから、この問題に特別な関心をよせ、日々かかわりを持っている人には特にそうだろう。そして上のベルギーの放送局による番組の放映日でも分かるようにこの事件についての記憶は今でも更新されている。

冒頭の事件についての、あるいは同様の性質の問題についての、日本政府、日本人の対応が、外部の目からどう見られるかにかかわる一つの与件として、紹介しておきたい。

この事件に関しては、日本語では唯一、当時の Ovniの短報で読めるだけのようなので、この記事の意義も少しはあるとか思う。