同性結婚を認めた市長に職権停止措置


Mariage gay: le maire Mamère suspendu un mois
Le maire de Bègles a annoncé qu'il allait saisir le tribunal administratif de Bordeaux.
Par Libération.fr mardi 15 juin 2004 (Liberation.fr - 19:19)

ゲイ結婚でベーグル市長マメール氏1か月の権限停止処分。市長側、ボルドー行政裁判所に処分無効確認を申し立てへ。

ノエル・マメール氏は緑の党の国会議員(元党首)でボルドー近郊のベーグル市の市長(人口2万そこそこなので町長といったほうがいいかも)。同性結婚を認めさせる運動に積極的に関与し、先々週の土曜日6月5日、以前から結婚手続きを求めていた二人の青年の結婚式を強行した(フランスでは結婚は地方自治体の長またはその代理の立ち会いのもとの儀式・手続きを経て法的に成立する)。同性の結婚はフランスの現在の法律では認められていないとして大統領、政府、検察が反対、強行の際には結婚無効の法的手続きをとり市長を処分すると警告していた中で行われ物議をかもした。内務省は市長の職権について監督権がある。制裁を決定した内務大臣は前外相のドミニク・ド・ヴィルパン。

ル・モンドフィガロはAFP電による記事。ル・モンドでもリベラシオンでも割りに地味な扱いなのに比べ、フィガロのネット版ではこの記事が現在のところ国内ニュース欄のトップでマメールの写真入り。どうもフィガロはこの問題にいちばん関心があるようだ (^_-) 。


この結婚を伝える毎日新聞パリ特派員による毎日-Yahoo Japan の記事 「 <同性愛結婚>フランスで初めて男性同士が挙式(6月12日19時32分更新)」は、

「フランスで初めて同性愛の男性同士による結婚式が12日までに、仏西部ボルドー近郊ベグルの市役所で挙行された。」

と書き出しているが、一読するからに奇妙だ。結婚式は上述のように6月5日。フランスのテレビなどではトップニュース扱いだった。遅れて記事を送信する特派員の姑息なわざなのか、原稿を握り潰していたデスクが思い直して採用する際に鮮度の落ちているのをごまかすために勝手に書き直すのか。牛乳のパックに「6月15日 までに 製造」と書いてあったらちょっとひきますよね。

ここまで書いてYahoo! Japanでまた同工の書き出しの記事を発見。

仏で初の同性婚挙式 検察、無効申し立て
 【ブリュッセル13日共同】12日付のフランス紙ルモンドなどによると、フランス西部ボルドー近郊ベグルの市長が後押しし、同国初の同性愛カップルによる結婚式がこのほど行われた。

この問題は4月にマメール氏がその意図を発表して以来大きな議論となり、特に5月末から6月5日の挙式まで、そしてその後現在までも、結婚の法的な有効性、マメール氏への処分をめぐって連日のように報道されている。特に6月4日や5日当日には、本当に行われるのか、政府がどういう強行手段に出るか、その綱引きをめぐって皆が固唾を飲んで成り行きを見守る状況だった。社会党の有力政治家を2分する騒動にまでなった。ル・モンドだけでも数十本の記事がこの結婚に触れている。主なものだけでも12日までに以下のようなものがあり、特に当日の5日付けでは複数の記事が出ている。

11 Avril : Noël Mamère prêt à célébrer des mariages homosexuels
22 Avril : Noël Mamère veut célébrer le premier mariage homosexuel
23 Mai : La volonté de M. Mamère de célébrer un mariage gay suscite des réserves dans sa majorité municipale
27 Mai : Mariage homosexuel : début des hostilités juridiques entre la chancellerie et Noël Mamère
27 Mai : Noêl Mamère célébrera côte que côte le mariage de Stéphane et Bertrand
28 Mai : Le procureur somme M. Mamère de renoncer à marier deux hommes

2 Juin : Mariage gay : Jean-Pierre Raffarin menace Noël Mamère de sanctions
3 Juin : L'incompétence territoriale pourrait empêcher Noël Mamère de célébrer le premier mariage gay
5 Juin : Bègles sous pression à la veille du premier mariage homosexuel
5 Juin : Le premier mariage homosexuel en France a été célébré en Gironde
5 Juin : Mariage gay, le défi
5 Juin : Mariage gay : cérémonie et polémiques
6 Juin : Noël Mamère, en dépit des obstacles, s'obstine à célébrer le premier mariage gay

7 Juin : Noël Mamère menacé de suspension après la célébration du premier mariage gay
8 Juin : Le premier mariage gay à peine célébré, des sanctions sont engagées
8 Juin : Deux procédures de sanction engagées contre Noël Mamère
11 Juin : Mariage gay : Noël Mamère écrit au pérfet de Gironde

「12日付のフランス紙ルモンドなどによると...このほど」なんていうのを見るとル・モンドを週1回しか読まないのかと皮肉の一つも言ってみたくなる*1。そしてYahoo! Japanにはこの問題については上の2つの記事しかない。そんな特派員記事よりも毎日ル・モンドを読んで解説を加えてくれる人のこういうブロッグのほうがよほど役に立つ→ふらんす掲示板 www.kehjiban.com

なぜこういう1週間やそこらのずれにこだわるかというと、「○×さんがと△□さんが入籍していることがこのほど分かりました」のような印象を与える記事だと、この結婚が国じゅうが注視する中、大きな論議とともに行われた政治的行為だという背景情報がすっぽり抜け落ちるからだ。そういえばル・モンドは挙式直後に臨時ニュースをメールで配信した。

*1:皮肉ついでにいうと、共同の特派員氏はル・モンドの熱心な読者ではないが裏事情通ではあるらしい。「野党「緑の党」下院議員で同性愛者のノエル・マメール市長が立ち会い」と書いているが、マメール氏が同性愛者云々という情報はここではじめて見た。現パリ市長が同性愛者であることを公表しているのは有名だが、マメール氏についてはル・モンドの記事をはじめマスコミの報道で見る限りそういう情報はない(ついでに言うと彼には妻子がいる)。英語圏のメディアの報道でもそういう情報を付け加えたものはない。どこで仕入れたネタか知らないが、正しいにしてもフランス語で出れば問題となる一行だろう。