「ブッシュによる世界」−−もう一つの「華氏911」

フランス公営TV、France 2はウィリアム・カレル監督のドキュメンタリー・フィルム「ブッシュによる世界 Le Monde selon Bush」を6月18日夜放送した。France 2もスポンサーになっており先週の終りからあちこちで宣伝されているので期待して見た。

ブッシュ政権が政権についてから米国で行っていることをイラク戦争を中心に追跡したもので、つまりマイケル・ムーアの「華氏911」とほぼ同じテーマを扱っている。まだカンヌでしか上映されていない「華氏911」を見ていないのでその予告編や報道を基準に比較するしかないが、「華氏911」が反ブッシュ宣伝を自ら標榜し映像のアピール力を利用しているのに対し、こちらの「ブッシュによる世界」は関係者のインタビューだけでほぼ構成された正攻法的なTVドキュメントになっている。

まずインタビューで出演している人物が広範だ。ラムズフェルト、ライス、ウォルフォヴィッツらの現在ホワイトハウスの中核を占める人間は全員が断ったというが、武器商人との関係したスキャンダル問題で国防政策委員会の委員長を辞任したネオコンの「暗黒のプリンス」リチャード・パールはインタビューに応じペラペラしゃべっている。レーガン時代の国防長官で現在国防分野の巨大投資会社網カーライルグループのトップ、フランク・カルルッチもよくしゃべる。CIAの元エージェント、パトリオットアクト2の草案作成者、悪の枢軸スピーチの起草者など他にも「インサイダー」がぞろぞろと出てくる。

浮き彫りになるのは、月並みな表現だが、ブッシュ政権の異常さ(いろいろな点にいついて何人もの口から「米国の歴史の中で前代未聞」という言葉が何度も繰り返される)、恐るべき腐敗、欺瞞体質である。この問題について関心のある人にとっては新事実というのはほとんどないが、それらがオンパレードになると正直言って見ていて文字どおり鳥肌が立った。それも陰謀論者のペンからではなく関係者の口から語られる証言のリアリティーは圧倒的だ。

このドキュメント、「華氏911」の存在を知らずに制作がスタートし、カンヌに出品を予定していたがムーアの映画とだぶるということでカンヌの出品作に選定されなかったという。7月にDVDの発売が予定されている。日本ではどういう扱いになるだろうか。NHKに放映する骨はあるだろうか。

今チェックしたらホームページがちゃんとあって英語ヴァージョンのページもあり、予告編が動画で見られる。
http://www.lemondeselonbush.com

このドキュメントについてはまた改めて書きたい。