フランスの知識人−−生きている旧旧世代巨人

新世代の記事のついでに...

www.ideesdefrance.fr を紹介する昨日の記事にこんなブックマークコメントがついていた。

>terazzoさん
これを見ていれば生きてるか死んでるか分かるよ!!
http://www.ideesdefrance.fr/agenda/agenda_personne.php?id=201

なんだろうと思って指定リンク先を見にいくと、サイト内人名辞典のレヴィ=ストロースの項目。

「まだ生きてるんだ〜」という話題は日本のネットで何年か前にも目にしたが、健在である。1908年11月28日生まれ、現在97歳。アカデミー・フランセーズ会員。去年たしかArteで特集番組があって、近年の撮影だと思うけど長いインタビューに応じていた。ideesdefrance のページの近況欄に昨年11月のユネスコ設立60周年記念式典で講演したというのがあるのでリンク先をたどっていくと、講演のビデオがありました。

ビデオは式典の全編を収録しており、レヴィ=ストロースの出てくるのはまんなかあたり、1時間58分くらいのところから。これはことばがわからなくても是非とも一度フランス語版で聴いてほしい。手は震えているけどことばはしっかりしていて、なんといっても30分近いびっしりと内容のつまった講演を用意し、こなしているところにすごさを感じる。

人種概念の粉砕、少数文化・言語の維持の問題、文化多様性と生物多様の関係などをユネスコの活動について論じている*1。人間を他の生物と切り離し、その上に位置するものとする西欧近代の思考に対する強い批判で講演を閉じる。2006年とか2008年のユネスコの企画についても触れているので、まだ意欲満々のよう。

講演の真ん中あたりで、14-15世紀の国際ゴシックと現代芸術を、芸術と身体の関係、グローバリゼーションに関わらせながら比較している。その中で、よくある常識的な嘆きを越えて、グローバリゼーションの中から芸術多様化の可能性が生じてくる可能性に触れているところが印象的。このくらい生きていろんなことを見ていると、中途半端な長さ生きている人よりも、目先のことにとらわれない発想ができるのかもと思った。もちろん個人的資質が大きいわけだが。聴きながら、あちこちにピアスしたゴス娘とまじめに会話している翁の姿を想像した。

*1:じつのところは、こうしたユネスコの活動じたいに、レヴィ=ストロース自身が過去積極的に関与している。過去のレヴィ=ストロースユネスコ講演の簡単なまとめは → http://www.unesco.org/courier/2001_12/fr/droits2.htm