ル・モンドの日付け


この日記でル・モンドを引用するとき「○月×日付け(ペーパー版)」とか○月×日付けのネット版」のように書いているが、それには理由がある。


ル・モンドはパリだと午後に刷り上がったのが売り出されるが、それは翌日の日付をもっている。新聞が郵便配達でフランス各地の予約講読者の手元に入るのが翌日になるからである。地方によっては宅配のある地方新聞の配達網にのって届けられることもあるがこれもパリの次の日となる。


したがってその日付のペーパー版を読むときは、だいたいテレビやラジオだと前々日に報道されたニュースにつきあっていることになる(おまけに日本と時差があるのでここで紹介する記事のペーパー版の日付は日本での報道と3日ずれることもある)。今では一日前の日付のものはパリ市内で売り出される少し前に、ネット版でもダウンロードできるが、それでも朝一で他紙が出てから半日後になる。


ル・モンドの役割は速報性にはない。記事の確かさや解説の充実にある。スクープといっても一分一秒を争って他紙に先駆けるものではなく、他紙が入手しえなかったソースによるものになる。悠長といえば悠長だが第一報の嵐が過ぎた後、翌日、翌々日にまたゆっくり記事を読むのも悪くない。


ル・モンドは今ではネット版があり、そこでは速報欄でAFPの配信の記事をそのまま流したり、ネット版の「紙面(?)」に組み入れたりしているので、速報性はそこで補われることになった。ネット版の予約講読者には重要臨時ニュースをメールで配信することもある。


一つのニュースがまず通信社配信のもので一旦ネット版に流れ、その後、自社記事が新たに書かれペーパー版に載ることもある。ペーパー版のものはネットにも載るので、ネット版を見ていると同じ事件の記事が2,3日続けて出ているような気になることがある。この日記でもムーアの「華氏911」のR指定問題をとりあげた際に出くわした(本日記6月15日6月17日)。自社記事で書かれたものはジャーナリストの署名入りとなり、背景解説など通信社配信のものより確かによくできている。


とは言え次のような例はちょっと遅い...


La Cour européenne des droits de l'homme protège la vie privée de Caroline de Monaco

LE MONDE | 01.07.04 | 14h07 ARTICLE PARU DANS L'EDITION DU 02.07.04


ヨーロッパ人権裁判所、カロリーヌ・モナコ王女のプライバシーの保護を認める判決
ネット版7月1日、ペーパー版7月2日付け


AFP電が出たのは6月24日で、この日記では6月25日の書き入れで取り上げた*1


AFP電からここで先駆けて取り上げた準マイナーニュースが、ル・モンド本紙記事になるのがこれで2件目というので「先見の明」をちょっと自慢したいが、逆にいうと感性が少しル・モンド化しすぎてきている証拠で、少しこの新聞に距離をおいたほうがいいかもしれない。

*1:このとき一通りこの件を調べた者として言うと、確かに上のル・モンドの記事は、めくばりがききよくまとまっている。多くのメディアが通信社配信のものを流して終りなのに対し、こういう独自記事は光るし、一年後に引用するときにもっとも便利なものとなる。それに対し1週間の遅れが対価になっている訳である。また「7月1日までに判決がおりた」というような姑息な書き方はしていない。