仏初の同性婚は有効...

ベーグルの同性婚の無効判決については昨日、速報の段階で簡単に触れた。詳細を少し補足しようと思いながらそのままになっていた。Yahoo!-Japanで記事が出たのでこれを引きながら。

仏初の同性婚、受理は無効

フランスのボルドー地方(仏南西部)大審裁判所第一市民室の判事は27日、同地方のベーグル市庁舎が受理したフランス初の同性愛カップルの結婚は無効との判断を下した。同性愛カップルの結婚は7月*1にベーグル市のマメル市長(緑の党)によって執り行われたが、市長は「違法な手続きの結婚手続きを行った」として内務省から1カ月の職務停止処分を受けた。同性愛カップルの結婚に関してはシラク大統領も市民法*2に違反していると指摘していた。(パリ 山口昌子)(産経新聞
[7月28日15時48分更新]

まあ、大筋としてはそうだが、多くのフランス国内のニュースでの扱いはもうちょっとニュアンスに富んで面白い。AFPの配信する記事は次のようになっている

ベーグルの同性婚に無効判決、しかし上級審まで依然有効
Le mariage homosexuel de Bègle annulé mais encore valable jusqu'à l'appel

BORDEAUX (AFP), le 27-07-2004

二人が控訴を言明しているのは昨日触れた。この判決は、結婚を受理したのは違法で無効とする。が、手続き的には、控訴がある以上、上級審で解決するまでベーグルの市長が法的に認めた結婚は依然有効とういうことらしい。この裁判は受理されたものを無効とする確認を求めて国が訴えていたもの。ということはどこの公的機関に行っても、今ある婚姻証明書で、手続き的にはしばらくは夫婦として扱われるわけだ。権限管轄が明瞭で書類が第一の国ではこんなことが起こり得る。

AFPの記事には判決文がところどろこ引用されている。二人は「民法には結婚は男女でなきゃだめとは書いていない」と主張していたが、これについて、
「互いの性が異なることは明確にフランスの法では結婚の条件である」とはっきり言う。「民法には結婚の条件として性が異なることを明示的に言及してはいないが」「このことは民法の起草者にとっては当然のことであった」と、理由を述べる。それはそうだ。

二人は、フランス国内で無効とされても、欧州人権裁判所までがんばると言っている。たぶん欧州人権裁判所までいっても無理だと思うが、面白いのは、判決も次のように、欧州人権裁判所の判断を気にしていること。

欧州人権裁判所が現在まで配偶者の条件として異性であることを要求する国内法を制裁していないことはあらゆる仮定から判断できる。」

そして「モラルの変化と平等の原則の尊重によって結婚の定義が今後変わることがあるにせよ、この問題は十分な議論の対象にならねばならず、立法側の介入を要求する」とする。つまり法律を変えなければだめと。

そして現在の状況では「結婚の伝統的な機能は家族の基礎をつくることと通念的に解されるものである」とする。TVのインタビューで二人の弁護士が、子供を作り家族を作るというのが結婚の機能というのは不妊カップルに対する侮辱だとか何とか、この最後の文言に噛み付いていた。これも確かに。

判決は予想されたもので、常識的に考えて妥当な線だとだいたいの人が考えるだろう。もともと彼ら(とマメール)としても意図はこの問題に世論の関心を高めること。面白いからしばらく頑張って、欧州人権裁判所がどういう論理を展開するかまで見させて欲しい。

*1:正しくは6月5日

*2:こういう文脈では code civil を普通は「民法」と訳し、「市民法」というのは「社会法」などと対立して違う文脈で用いられると思うが。それとも「民法」でなく「市民法」が今は流行か?