コカイン依存症になるネズミ

この機会に医学関係でもう一つ紹介。一週間ほど前、仏国立衛生学研究所(INSERM)の面白いタイトルのプレスリリースがニュースに流れていて目を引いた。


ネズミと人の...麻薬中毒患者
Des rats et des hommes…toxicomanes

INSERM Information presse
Paris, le 11 Aôut 2004

麻薬の自発的摂取は動物界の多くの種に見られる現象である。しかしこれまで、麻薬の強迫的・病理的な摂取として定義できる中毒現象は人間に特有な行動でその社会構造に関係すると考えられてきた。本日、Pier-Vincenzo Piazza (Directeur Unité Inserm 588 "Physiopathologie du comportement 行動の整理病理学" )のグループによる研究は人間の麻薬中毒を特徴づける行動がコカインを自発摂取するネズミにも現れることを証明した。人間とネズミの中毒患者は驚くほどの類似を見せる。この動物に薬物依存行動が見られることで、麻薬中毒は本格的な脳の病気であり、薬物の長期摂取だけでなく個人の影響の受けやすさにも原因があることが考えられるようになった。この研究結果は麻薬中毒患者の生物学的秘密を明らかにし、そこから、治療法を改善することを可能にするだろう。

8月13日付けの「サイエンス誌」に掲載とのこと。訳した上の部分はプレスリリースのリード文の部分で、あと詳しく解説がつづき、論文の長いレジュメといっていい。最新研究が素人にもわかることばでしかもある程度詳しく解説されているのは助かる。

コカイン摂取を覚えたネズミのうち17%が決定的な依存的中毒患者になる。人間ではこの比率が15%。これは脳に関係する個体差らしいという。これらのグループは薬物絶ちの療法が効かず、罰を与えても、自己の健康を破壊してまで、必ず摂取行為に戻っていく。

これが事実なら、完全な依存に陥っている中毒患者には、薬物絶ちによる治療や心理的・社会的カウンセリングではなく、別の治療が絶対に必要ということになる。