米政府、北朝鮮の核実験計画を懸念。

北朝鮮の核実験の計画の可能性についてアメリカ政府で議論
Les USA se demandent si la Corée du nord ne prépare pas un essai nucléaire

アメリカ政府の情報機関は、北朝鮮から得られた新しい諸データを同国が初の核実験を計画している兆候と解釈すべきかどうかについて、議論の真っ最中である。アメリカの複数の政府高官がAFPにこう伝えた。
12/09 05:56 Les services de renseignements américains sont en plein débat pour déterminer si de nouvelles données en provenance de Corée du nord doivent être interprétées comme un signe que le pays se prépare à organiser son premier essai nucléaire, ont indiqué samedi à l'AFP de hauts responsables américains.

アメリカ大統領選挙の前に北朝鮮が核実験を実行することになれば、北朝鮮の核開発の意欲を外交手段による囲い込みで封じようとするブッシュ大統領の選択した方針に疑問が投げかけられることになる。

ブッシュ大統領は過去何回か、北朝鮮の隣国とアメリカのを集めた6か国協議が北朝鮮核兵器への野心を有効に封じ込める手段となると言明しているのに対し、民主党の大統領選対立候補ジョン・ケリー氏は北朝鮮政府との直接交渉の開始を主張している。

情報筋の高官らは情報機関での論議を呼び起こしたデータがどのようなものかについてはっきりとした言明を避けたが、「北朝鮮核兵器製造能力についてわれわれが懸念しているといういのは周知のことだ」と、そのうちの一人は述べた。

ニューヨークタイムズ紙は、北朝鮮の人目につかない複数の場所で装備の怪しい動きがあることをアメリカの情報機関がキャッチし、情報分析家たちがこれらが核実験施設になり得ると考えているとういうことを伝える記事を日曜版に掲載することになっている。

しかしながらすべての情報機関がこの動きについて一致する解釈に達せず、地下施設につながる電力線が見つかれば、核実験のはっきりした証拠となるはずであるが、そうしたものは検出されていないと、同紙は伝える。

上の記事の出たタイミングについて若干説明が必要。この記事は、例の木曜日の謎の爆発についてのフランスのネットでの第一報が流れる約30分後の時刻になっているが、明らかにこの爆発についてのニュースとは独立のもので、爆発についての情報がない前提で書かれている。また、パウエル国務長官が爆発は核実験のものではないと発表する以前のもの。

北朝鮮の核実験への懸念をもたらしたデータにこの爆発が含まれるかどうかは上の文面から定かではない。

AFPのこの記事は、問題のニューヨーク・タイムズの記事の簡単なまとめであると同時に、独自に政府高官筋からこの内容について確認をとったという役割をもつものとなる。

ニューヨーク・タイムズの記事は

Atomic Activity in North Korea Raises Concerns
By DAVID E. SANGER and WILLIAM J. BROAD
Published: September 12, 2004

日本と韓国はアメリカからこれらのデータの具体的内容についての報告を受けていない。神経質になっている韓国はアメリカ政府に爆発について伝え問い合わせたと、記事は伝える。記事から一歩踏み込めば、韓国で独自に今になって爆発の情報が発表されたのは、情報を共有しようとしないアメリカへのこのいらだちからとも考えられる。

北朝鮮の核実験が、韓国や日本でアメリカと独立に核装備をするべしという国内的な政治圧力を高めることになり、アジア諸国の核政策に大きな変化をもたらす可能性を、アジアにいる米政府の官僚やブッシュ政権の国家安全政策チームは恐れているとも、書かれている。

上の情報を総合すると、アメリカ政府の現在の利益は、大統領選への配慮、核の傘体制を維持のために、北朝鮮の核脅威について事態を小さく見せるほうにあると考えることができる。アメリカが情報を共有せず、過少評価に益を見出す以上、韓国と同じく日本は、アメリカの公式発表に頼らず、独自の情報収集・分析が必要という結論になる。

とりあえず日本国内メディアは上のニューヨーク・タイムズの記事を、分析をまじえながら、じっくりと伝えてほしい。

id:teratsu さんがこの問題を追っている(id:teratsu:20040913)

◆これまで北朝鮮の問題についてこの日記で書いたことがない。その理由は、日本のほうがはるかに情報が豊富で、はてなでも詳しく書いている人が多いだろうし、日本や韓国から特派員経由で書かれた二番煎じのヨーロッパの報道を紹介してもしょうがないと思ったからである。ヨーロッパからの目が意義があるとしたらせいぜい、あらゆるデータで北朝鮮脅威をいたずらに扇動する方向に対し、第三者的な冷静な見方を紹介することくらいだと思っていた。ところが、temjinus さんが 今回の爆発のについてニュースを紹介する中、「日本の新聞に情報が少ない」と書いているのを読み(id:temjinus:20040913)驚いた。活字メディアやテレビで豊富に補われているのかもしれないが、ネット記事だけでみると確かに日本のほうが情報が薄い。アンダーグラウンド的なネットメディアでのいささか強迫観念的な脅威論は、案外これへの対抗関係にあるのも知れないと気づく。temjinusさんによって新しくなった認識とともに、これについても注意深い観察が必要と痛感。