すべてがオハイオで...離婚手続
すべてが選挙人20のオハイオで決まるということだが、開票されない暫定票175,000 (最初250,000 という話もあった)に対し、現在の差が144,000 では、暫定票を10日後に開票しても、手続き的な意味以外はない。現在の差がこの100分の1なら別だが、10分の1だったとしてもケリーには苦しいところだ。全国的な得票率でも前回と違い今度はブッシュがリードしている。ホワイトハウスはさっさと勝利宣言を出した。
リベラシオンは先ほど、アメリカ政治を専門とする国際政治学者 ドミニク・モイジ Dominique Moïsi 氏のインタビューによる、ブッシュ勝利を前提とした解説記事を掲載している。
アメリカ人が選んだのは候補者ではなく価値体系
«Les Américains ont choisi des valeurs plus qu'une personne»
mercredi 03 novembre 2004 (Liberation.fr - 12:15)
Dominique Moïsi, spécialiste des Etats-Unis à l'Institut français des relations internationales analyse le scrutin présidentiel.
オハイアが2000年のフロリダの再現になることはないだろうと確認したあと、モイジ氏は、オハイオでも他の中西部と同様に、経済よりも、9.11以降の「治安、国家の安全」の最優先、同性婚に象徴されるようなリベラルな価値観への拒絶が、価値として選択されたと分析する。そしてこれが今回のアメリカ全体が選んだ価値観だと。
「世界はブッシュ的アメリカを否応無しに受け入れなければならないことになるのか(Le monde est donc condamné à une Amérique "bushienne" ?)」という質問に対し
ジョン・ケリーよりもジョージ・ブッシュのほうが現在のアメリカとよく馬が合っているという考えに慣れなければならない。ヨーロッパは、自分たちがこれまで知ってきたアメリカはもはや存在しないという事実を受け入れなければならない。二つの世界の離婚は起った。
Il faut se faire à l'idée que George Bush est plus en harmonie avec l'Amérique actuelle que John Kerry. L'Europe doit accepter que l'Amérique qu'elle connaissait n'existe plus. Le divorce entre les deux a eu lieu.
とする。
これはここ1,2年のフランスの多くの知識人やテレビなどでの見方を代表するものだ。フランス人の多くが、アメリカがすでに異質の文明になってしまったと考えだしている。いやもともとアメリカと欧州の文明は別ものでたまたま半世紀ほど一致していたようにしか見えないに過ぎないというラジカルな見方もあった。
リベラルな価値観を共有する大多数のアメリカ人がいるにせよ、国全体としては、極端にいえば、原理主義的宗教観にもとづくイデオロギーを持つ人々を指導者にいただく国、そうしたイデオロギーが民衆レベルに深く浸透している国、そしてそれでなおかつ強大な軍事力を持ち、一国主義で世界を支配する国。最近出た「アメリカ本」の大多数が、フランスのアメリカ通、旧来の親米家のものも含めて、そうした観点でアメリカを描きだしている。そして今回の選挙はアメリカの文明としての選択を占うものとして注目された。そうした問題に比べればイラクの占領政策をめぐるあつれきは、既成事実にどう対応するかという二次的な問題でしかなかった。
今回の選挙の結果によって、二つが違う世界に属するという捉え方が決定的になっていくだろう。さてそうした新しいアメリカと今後どういうふうにつきあっていながら、欧州的価値観をどうやって守るか、というのが今後の議論になっていくはずだ。