アジア・日本関係情報の世界への窓としてのXinhua

散漫ついでに脱線していくと、id:Jonah_2:20041110#p1 で最後に紹介されている、中国語のニュース「小泉首相、中国青年代表団と会見。中国の発展は日本にとって脅威ではなくチャンスだと述べる。」は、フランス語でまったく同じものが読める。

Le développement de la Chine n'est pas une menace, dit le PM japonais

TOKYO, 10 novembre (XINHUANET) -- Le Premier ministre japonais Junichiro Koizumi a dit que le développement de la Chine ne constituerait pas une menace pour le Japon mais serait une opportunité, appelant les deux pays à renforcer davantage les échanges entre les jeunes générations.

出所が Xinhua 新華社通信で、同じニュースのフランス語版なので当然だ。

Google News France で xinhuanet.com は重要なニュースソースの一つで、これはさらに他の欧州メディアにも引用される。Xinhua を情報源とするフランス語ニュース(これにはAFP電などを流用してXinhua が再発信しているものも含まれる)が今どのくらい流通しているかというと → Google News France keyword : xinhua

AFPや AP, Reuters のフランス語版も日本関係のニュースをかなりまめにとりあげており、メジャーなメディアは後者を利用する。が、問題は 日本関係のフランス語ニュースで、新華社 Xinhua 配信のものが唯一の情報源というものがちらほらあることだ。新華社電の日本関係の報道でとりあげるニュースの選択、その扱いにある種のカラーがあることはいうまでもないだろう。これが日本、およびアジア関係ニュースのフランス語圏への窓の役割を強めてくると、その影響力は無視できない。一方、日本からの発信はAFP、AP、Reuters のニュースがとりあげてくれるものに頼っている、いわば人任せの状態だ。

ちなみに例の8月のサッカーのアジアカップのとき、日本のニュースがサポーターのブーイング問題で興奮していたとき、新華社のフランス語ニュースは、沈黙を守り、記事として配信したのは、この大会のために日本側が作成した地図に台湾が別の色で塗り分けられていたことで外務省に抗議云々というものだった。今回の潜水艦問題についてももちろん記事はない。

新華ネットのページには、スペイン語版、ロシア語版、アラビア語版もある。ロシア語版、アラビア語版がどれほどの規模かは私の語学力では確かめようがないが、フランス語版よりも、さらに日本・アジア関係の報道について、独占状態が強くなることは想像にかたくない。

日本側から見れば不公正だが、この通信社に国策の息がかかっている限り、怒ってもしょうがない。要は英語圏以外に独自の発信力が極めて弱い日本が完全に情報戦に負けているということだ。

発信するほうの情報だけでなく、受信するほうにも、中国と日本の格差が大きくなっていくように見えることがある。欧州関係のAFP電で日本の通信社で配信されていないニュース、数行で済まされているニュース、半日遅れで報道されるニュースが、新華ネットで極めて迅速に詳しく中国語に翻訳されているのにしばしば出くわした。

発信、受信ともに日本のほうが世界に対して情報鎖国になっていくのではないか、それに対し中国のほうが上手に情報をコントロールしながら、強い影響力を持つようになるのではないかという予感を以前から持っている。サッカーサポーター問題のときも書こうと思ったが、機会を逸してしまっていた。ずっと気にかかっていたので、きっかけが戻ってきたこの機会に書いておきたい。情報大国のはずの日本が、国内の三面記事や、アメリカからのニュースの受信の部分だけが肥大しているというのは見ていられない。