中国と米国のパートナーシップの間で

上のAFPの潜水艦報道に話をもどせば、id:Jonah_2 さんが同じ記事(id:Jonah_2:20041110#p1)で紹介されている防衛庁が想定している日本攻撃の複数のシナリオについても、詳しく触れられている。

軍人にとって仮想敵のシナリオは、作成が仕事の一部、宣伝が商売上の資本だからおどろくに値しないが、騒然とする国際事情の報道の中に置くとき、みみっちい国内事情とは別に、ある種のリアリティを帯びて読めるのが嫌な話だ。とくに次の記事を思い出していた。

10日づけのフィガロの論評欄に、Alexanre Adler という人の、

アメリカ−中国。どのようなパートナーシップに? −− ジョージ・W・ブッシュ再選後のアメリカ外交の新しい課題
Washington-Pékin : quel partenariat ? Les nouveaux chantiers de la diplomatie américaine après la réélection de George W. Bush

Alexandre Adler
[10 novembre 2004]

というかなり長文の記事がのった。世界経済的の中で急速に重みをましていく中国、いわゆるネオコンの政策をフリーハンドですすめていくはずの米国、その二国が、経済的にも依存を深めていく中で、どのような関係になっていくのかという問題意識で、中国の戦略、それに対する米国の対応のシナリオを書いたもの。

アイディアの中心は、中国がアメリカの「テロとの戦い」にのっかる形で、周縁・周辺イスラム文化圏との対決を強め、そこにある種の米中の同盟関係、役割分担ができるというもので、それとともに、アメリカが中国に対してとりうる外交関係のオプションがややこしいものになっていくと指摘する。その中で、中国はアジアの覇権を米国から引き継ぐ方向へ向かうであろうし、具体的に台湾の問題が政治日程に上がってくる。「そう遠くない将来、北京政府は米国に対し、パキスタンを孤立させることと引き換え条件に中国再統一[=台湾併合]に関する協力を要求する。」これをアメリカが外交的にどう扱うかは非常に神経を使う問題となるだろうとする。そして、こうした中国の動きに直面して、アメリカは他の西洋諸国と前のようにもめるひまはなくなってくるだろうと続き、前に紹介したル・モンドリベラシオンの「二つの世界」論の、間接的な反論となっている。

かなり大ぶろしきのところがあり、散漫な文章で、眉に唾して読んだが、いろいろな示唆的な点があり、保守派に属するフランスの評論家が、少なくとも、どのような視点で中・長期的な国際情勢を観察しているかが見える。私自身は短絡的に結び付ける気はないが、潜水艦の話が、こうした文脈に生生しさをもってはまっていくのが、上に書いたように、イヤな感じだ。