ロンドン同時多発テロ−−価値体系の衝突(ル・モンド)

Edito du Monde Conflit de valeurs
ル・モンド社説 価値体系の衝突

7月8日付け(ペーパー版は翌日付け)ル・モンド 署名なし
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リベラシオンの社説につづいて、ル・モンドの社説を紹介します。リベラシオンの社説がイギリスの状況を焦点にあてて書かれていたのに対し、ル・モンドのものはそれを越えたところで、今回の事件を民主主義社会全体にとってのものとして内在的にとらえています。そしてその価値体系とそれを破壊する者たちを切り分けた上で、なおかつ、安易な「文明の衝突」論の罠を避けることに気をつかいながら書かれています。
(翻訳はじめ)

手放しの喜びは短命に終ることになった。すべてがうまくいったように見えていた。その首都がオリンピック開催地権を獲得したばかりのイギリス、そして、3選を果たし、G8サミットとEUの議長となっていたその首相にとって。ロンドンに対するテロ攻撃は冷酷な現実を呼び覚ませるように鳴り響いた。

1940年のドイツの爆撃もIRAのテロも忘れていないロンドン市民は、こうした状況ではいつもそうであるよう、冷静にそして威厳をもって行動した。情報もあらゆるパニックを防ぐためにコントロールされた。ブレア首相は正しくことばを選んだ。そして政府の長としての責任と、サミットのホストとしての責任を両立させるのに成功した。他のいかなる選択も、国際政治日程を自分たちの力で変えることを目的の一つにしているテロリストに対し、余分の成果を与えるものとなったろう。

しかしながらグレンイーグルズの派手な会合の催しの中には冷酷なアイロニーがある。テロリストたちは、権力者たちへの挑戦としてロンドンの公共交通機関に爆弾をしかけ、何十人もの人間を殺害し、何百人もの人間を傷つける。その同じときに、G8を代表する政治家たちはスコットランドの、まさに防衛戦の砦のような場所で、何千人という警察によってオルターグローバリズム運動家たちの団体から守られ、会合を開いている。オルターグローバリズム運動家たちは、たしかに全員が平和的とはいえないが、自由な民主主義の制度に許容される範囲で秩序ある抗議行動を行っている。

ニューヨーク、バリ、カサブランカイスタンブールマドリッドで起った事件から考えてもロンドンのテロの犯人と推測できるイスラム過激派のばあいは、それと同じではない。彼らの目的は西洋世界の破壊であり、それが代表する生活様式と思考様式の破壊であり、それは地理的、歴史的な境を越えている。ブレア首相はこれらのテロリストと大多数のイスラム教徒とを混同しないように注意を払った。ロンドンのテロ文明の衝突であるとすれば、その衝突は西洋とイスラムの衝突ではない。それは、その理想において民主主義と自由の上に世界を築くことと、暴力と抑圧、専制の上に世界を築くことの間の衝突である。

それは価値体系と方法についての衝突である。発達した社会は快適さと安全を願う。その敵は、自らが吹き込む恐怖と、自らが称え、自己の生命さえも捧げる犠牲を糧としようとする。そこに一つの有利な点があるかもしれない。しかしそれは短期的なものだ。長期的には、民主的な社会の偉大さは、テロリズムに対する効果のある闘いと、自らの原則の遵守の間を和解させることにある。それはた易いことではない。「行き過ぎによる権利の侵害 bavures」は常にあり得、それは告発されなければならない。

成功の必要条件は、警戒、連帯、そしてテロリズムの真の原因と真の目的に関する洞察にある。

(翻訳おわり)