「使わない兵器」の使いかた−−シラク大統領と核

シラク大統領は、19日、ブルターニュのイル・ロング基地で基地関係者を前に演説したが、その中に核の使用の可能性について触れた部分があった。日本人にとっては聞き逃すことのできない発言。演説の全文がル・モンドに掲載されている。

Jacques Chirac, président de la République
"Protéger nos intérêts vitaux"

LE MONDE | 19.01.06 | 13h57


基地には核兵器搭載の潜水艦があり、そこに勤務する人々へのねぎらいのことばが、のっけから、その核抑止力の維持の職務について触れることではじまる。そして、核抑止力がフランスにとっていかに重要かということについて、具体的な装備、その近代化、また核拡散防止条約の遵守について触れながら、手をかえ品をかえ長い演説が続く。抑止力の意義についていつもよりかなり強いトーン。そしてかなり終りのほうで次のように述べる。

核抑止力は、2001年9月11日のテロ攻撃の直後に私が強調したように、狂信的なテロリストを抑止するためのものではない。しかしながら、テロという手段をわれわれに向けて用いる可能性のある国家の指導者たちは、大量破壊兵器をあれこれのやりかたで用いようと考えている者たちと同じく、自らが、断固たるそしてそれ相応の反撃にさらされるであろうということを理解しなければならない。この反撃は通常兵器によるものであるかもしれない。また他の種類のものであるかもしれない。
La dissuasion nucléaire, je l'avais souligné au lendemain des attentats du 11 septembre 2001, n'est pas destinée à dissuader des terroristes fanatiques. Pour autant, les dirigeants d'Etats qui auraient recours à des moyens terroristes contre nous, tout comme ceux qui envisageraient d'utiliser, d'une manière ou d'une autre, des armes de destruction massive, doivent comprendre qu'ils s'exposeraient à une réponse ferme et adaptée de notre part. Cette réponse peut être conventionnelle. Elle peut aussi être d'une autre nature.

問題になるのは、上の最後の部分。つまり、反撃の方法は、通常兵器以外のものもありうる、つまり外交的表現で、核兵器かもしれないと言ったことになる。そしてまた、話はぐるぐる回って、"近代化による核兵器削減もするけど、柔軟に備えだけはしています"というような話があったあと、ニュアンスを変えながら、次のように言う。

しかし、われわれの核兵器使用に関するコンセプトはなにも変わっていない。紛争の際の軍事的手段として核の手段を用いることはいかなる場合もありえない。核軍事力がしばしば「使用されない兵器」と呼ばれるのは、そうした考えからである。この表現は、しかしながら、われわれが核兵器を発動させる意志も能力もあるということについて、疑いを生じさせるものであってはならない。その使用についての曇りのない脅威は、われわれに対する敵意に動機づけられた[国家]指導者たちの上に、絶え間なくのしかかるものだ。この脅威は、それらの者を分別ある考えに戻らせ、自らの行為が自らにそして自らの国にあたえる可能性のある桁外れの代償について考えさせるために、必須のものだ。一方また、われわれは、自らの生存権を断固として守るという意志をはっきりさせるために、究極の警告を用いる権利をつねに保有しつづける。
Mais notre concept d'emploi des armes nucléaires reste bien le même. Il ne saurait, en aucun cas, être question d'utiliser des moyens nucléaires à des fins militaires lors d'un conflit. C'est dans cet esprit que les forces nucléaires sont fréquemment qualifiées "d'armes de non-emploi". Cette formule ne doit cependant pas laisser planer le doute sur notre volonté et notre capacité à mettre en oeuvre nos armes nucléaires. La menace crédible de leur utilisation pèse en permanence sur les dirigeants animés d'intentions hostiles à notre égard. Elle est essentielle pour les ramener à la raison, leur faire prendre conscience du coût démesuré qu'auraient leurs actes, pour eux-mêmes et pour leurs Etats. Par ailleurs, nous nous réservons toujours le droit d'utiliser un ultime avertissement pour marquer notre détermination à protéger nos intérêts vitaux.


直接的には、緊張する中東情勢と大統領選挙の二つの要因のからまりがあるのは明らかだが、ちょっとややこしい。シラクは大統領就任の年を、ムルロワでの核実験をめぐる大議論で飾って、特に日本ではその日本通の評判を吹き飛ばすほどの悪名をあげたが、引退(するとすればだが)をやはり核論議で飾ることになるのだろうか。核に対するオブセッションがあるとしか考えられない。ポピュリズムというより、フランスという国家の国際社会での存在のしかたにおける核保有の役割についてのこの人のほとんど頑な信念に根差しているように見える。これに関しても、彼の世界はすでに完全に国内世論からプラグ・アウトされているように思うのだが。

別の記事を用意していたが、緊急だと思ったので、急遽この記事を紹介。