フランスの大学スト拡大

fenestrae2006-03-10


大学のストが広がってきた。 Contrat première embauche 初回雇用契約制度(略して CPE)を導入する法律が10日に上院を通過したあと、すでに何週間も波状的に行われた学生たちの反対運動が、ここで一気に加速したことによる。法律の内容なども含めて日本の新聞で報道されているものとしては、日にちが少したっているが

フランス全土で学生デモ 首相の支持率急落
2006年03月08日 asahi.com

26歳未満の若者を雇えば最初の2年間は自由に解雇できる法案に反対する学生や労組のデモが7日、フランス各地であり、警察発表で40万人、主催者発表で100万人が参加した。ドビルパン首相はあくまで法案成立を目指す構えだが、支持率も落ち込んでおり、昨年6月の政権発足以来、最大の試練に直面している。

法案では、2年間の試用期間は理由を示さずに解雇できる措置を盛り込んでいる。政府は、企業の雇用意欲を高めて若年失業率を減らすのが目的と説明しているが、学生団体や労組は「解雇が乱発されて雇用がより不安定になる」と反発している。2月7日に反対デモを呼びかけたが、多くの学校が冬休みと重なり、参加者は20万人(主催者発表40万人)だった。

この記事では反対運動の形態としてデモを中心に紹介しているが、もう一つの大きな手段が大学のスト+ロックアウト。8日の段階で全国 85大学のうち20ほどの大学がストに入っていると伝えられていたが、10日夜には学生組合の発表で半数以上、45の大学がスト中ということになっている。ただし教育省側の発表ではこの数が半分以下で、主要学生組会の代表、教育大臣の双方で、情報操作として非難しあっている。

学生のストは授業に出たくないものが授業放棄というようなものではなく、学生自治会総会で投票を行い、そこでスト決行が決議されると担当者がピケを張り大学を閉鎖し、すべての授業がなくなるというのが本宅的な形。決議や意思決定のぐあいによっては一部分だけのストもありうる。ストが長引けば試験にもかかわるから講義が続行してほしい学生もいるので、全学ストをめざす学生とのあいだに利害の対立がおきるが、ストが決まれば総会の決議ということで正当化される。ただし、大学によっては政治的にアクティヴなものしか総会に出席しないので、かなり少ない人間の意志でスト決行さらには構内占拠が行われるケースがままある。

金曜日の夜の段階でもっとも注目されているのはパリ4大学+αのソルボンヌ校舎占拠(これは最初に大学側がロックアウトを行ったので話がややこしくなった)と、パリ10大学(ナンテール)の占拠。68年5月の記憶から報道が集中しているが、ここは比較的少数(数百人レベル)のアクティヴな学生のイニシャティヴによる性格が強い。

これと逆に大部分の学生が総会に参加してストを決めたのが地方大学のポワティエ。こちらはすで3週間ストが続いていて、今年の試験を心配する学生が出てきたので、続行かどうか議論が白熱し、全学4000人のうち3000人近くが3月8日の総会に参加した。この大学のようすを伝えるTVニュースが面白い。

大講堂で総会を行うとしたが参加者が多くて入りきらず→市営サッカー競技場に移動、→ 続行賛成側と反対側の演説 → 投票 → 開票結果僅差で続行決定 → ピケ担当者によって閉鎖、という一連の流れがわかる。

大学の学生組合の組織がどうなっているかは、昨年12月14日の記事「フランスの大学の学長選挙」 中の「評議員選出の政治学」のところで少し触れた。

ストや反対デモは全国に広がっており沈静化るようすはなく、長期ストで疲れているところを別とすれば、これから本格的に始まるという感じ。特に休み明けではじまったばかりの大学は元気いっぱい。次の大規模統一行動が3月18日に決定されている。

ヴィルパン首相は譲歩は一切なしの姿勢をとっているが、対立が激化して運動が盛り上がれば事の進展によっては、来年の大統領選挙の候補としては命とりになるかもしれない。そればかりか、与党そのものにダメージを与える可能性が見えてきて、与党内部から法案見直しの気配がでてきている。ヴィルパン首相のライバルのサルコジ内相は最初前者が失敗するのを待っていたが、与党全体に影響が及ぶにつれ、防戦に参加してきたもよう。

以下はリンクは現在進行中の情報を伝える。