イスラエル軍のエリコ刑務所襲撃の翌日、仏紙から
リベラシオン社説
「短期的視点」
Court terme
2006年3月15日 リベラシオン 中東問題−社説
ピエール・アスキ
Editorial Proche-Orient
par Pierre HASKI
QUOTIDIEN : mercredi 15 mars 2006エリコの刑務所に対する昨日の派手な−−パレスチナ自治区と呼ばれている地域での−−軍事作戦によってイスラエルは何を得たのだろうか。
たしかにパレスチナ過激派指導者アフマド・サアダトの拘束は、2001年にPFLPがその議長の殺害の報復として行った作戦で超タカ派のレハヴァン・ゼエヴィ観光相を殺害して以来、イスラエルの指導者たちの長いことの目標であった。すでにもう長いこと両陣営を対立させている人身攻撃の悪循環の一種の帳尻合わせというわけだ。
この事件が例外的とはいえないにせよ、その時期は明かに陳腐ではない。
イスラエルの議会選挙を2週間以内に控えて、イスラエル首相、カディマ党党首としてのアリエル・シャロンの後継者は、かつての自党リクードの進路を絶つために、右派世論に対する保証書を乱発している。エユド・オルメルには、その前任者の持つ、あるいはそのライバルのベンヤミン・ナタニャフの持つような軍歴がない。彼は昨日、リスクを伴う作戦を開始し首尾よく遂行できる能力をみせた。しかし、いかなる代償を伴って。
エリコの作戦の映像、とくに、パンツだけで軍事車両に乗せられる拘留者たちの映像は、パレスチナの地ではどれも屈辱として感じられるだろう。もう一つの別の刑務所、イラクのアブ・グライブの映像を−−状況に共通性はないものの−−思い起こさずにいられようか。アメリカの政策の信用を落とし、アメリカの駐留に対するレジスタンスを供給するのにあれだけ役割を果たしたその刑務所のイメージに。昨日のイスラエルの軍事力の誇示は、先の選挙においてハマスに投票したことが「間違っている」ということで経済制裁をすでに受けはじめているパレスチナ領内においてルサンチマンとフラストレーションを強める危険性をなにより持っている。とにかくにも二つの民族の共存の道を探ると言っていた政府にしては、驚くべき短期的視点による計算である。
ル・モンド社説
署名なし。ネット版15日づけ、紙版翌16日づけ。
辱められたアッバス
Abbas humilié
2006年3月15日 ル・モンド 社説
Edito du Monde
LE MONDE | 15.03.06 | 13h08エリコの刑務所の拘禁者を拘束するためのイスラエルの攻撃以来起きている外国人の誘拐は、ガザのブリティッシュ・カウンシルの攻撃とともに、断固として非難されなければならない。許し難いこの行為はまったくばかげている。人道支援組識の人員やガザの生活の困難さを報道しに来ているジャーナリストを脅迫することで、パレスチナの大義によりよい反響は得られはしない。そしてまた、エリコのこの事件はパレスチナ陣営の大きな孤立を浮かびあがらせる。
28日の選挙を2週間後に控え、エウド・オルメル首相は、最初から成功の疑いのない攻撃作戦によって、その凡庸な軍歴に飾りを加えるのが賢明だと踏んだに違いない。しかしこのイスラエルの「勝利」は多くの疑問を提起する。その第一は、パレスチナ人に加えられた屈辱、とくに自治政府リーダーのマフムド・アッバスに加えられたそれである。彼の責任のもとに置かれた拘禁者を力づくで奪うことで、イスラエルは、この忍耐強い対話の擁護者が自分たちにとってはいかに意味のない存在かということを、この上もないやり方で言ってみせることになった。
その選出から1年少したって、アッバス議長は自らのイスラエルとの関係の結果がどうだったか点検してみることができる。ガザはかつてないほど締め上げられている。完全に占領されたヨルダン西岸は「イスラエル国防軍」の囲い地になっている。これでどのように交渉の利点を納得させることができようか。それどころか、力だけが結果をもたらすというハマスの主張が大きく強められる。
問題に関与している国際社会−−アメリカとEU−−によるイスラエル攻撃に対する優柔不断な黙認にはまた困惑するばかりである。2月25日のハマスの勝利以来、イスラム主義者が力を失うのを待ちながら「穏健派」を力づけるべきであると人は信じた...そしてこうして今、「穏健派」が馬鹿を見ている一方で誰も声を上げるものがいない。どうやって、パレスチナ人たちに「テロリスト組識のインフラ」解体を要求し、そして同時に、その領土内でイスラエルが好きなことを行うのを認めることができようか。
エリコの攻撃は、破産状態にあるパレスチナ自治政府の執拗な破壊の新しい段階である。自治政府は自らが受け取る権利があり主に学校や病院の運営のために使われる金をすでにイスラエルによって奪われている。アメリカとヨーロッパはそれに対して何も言えず、そして自らも、パレスチナ領において現在唯一の安定勢力であるハマスの「抑止 containment」の名のもとに生活の糧を絶とうと威嚇している。アメリカ、ヨーロッパはそうして10年以上にわたり多くの代償を払ってその建設に貢献してきたものを投げ捨てる危険、危機に危機を加える危険、自らの望まない西洋への憎悪を育てる危険を犯している。
仏・韓のジャーナリストは解放
よかった。記事はあとで。