シャロン発言、一夜明けて波紋広がる。

昨日の夜に、早くもニュースを賑わせた、イスラエルのシャロン首相の「フランスのユダヤ人は移住を」の発言は、一夜明けて大スキャンダル。すでに昨日からユダヤ人の代表団体や反人種差別団体、ユダヤ系知識人、聖職者の非難のコメントがあいつぐ。ソースは極めて多数なので→Google ニュースサーチ。ちょっとした外交問題にまでなっている。Yahoo! France のトップページのニューストピック案内では、「シャロン爆弾 la bombe Sharon」といういささか趣味のよくないタイトルをつける。

フランスの今の緊急の課題として皆が認識しているのは「共同体主義 communautarisme」の克服だ。中東情勢のあおりをくらって日に日に激しくなるイスラム系住民とユダヤ系住民の対立を静めるために、対話・理解をというのが、どちらの側の宗教・市民団体もがともかくも建前的にはとる態度で、そのために実際現場で地道な努力をしている人たちも多い。シャロン首相の発言はそうした努力をすべて否定し、無用な対立をあおるだけのものだとして人々を憤激させる。挑発によって対立を激化させ永続的なものにすることで有利な地歩を固めようとする彼の常套の対パレスチナ政策(よく stratégie du pire 「最悪を呼ぶ戦略」と呼ばれる)をフランスに移すやりかたともとらえられた。

フィガロの社説はもっと踏み込んで、これは、現在のイスラエルの外交戦略に発する計算づくでの発言だとする。「シャロン、フランスを侮辱 L'affront de Sharon à la France 」と相当にきつい調子のタイトルをもつこの社説は次のように解説する。

アリエル・シャロンのこうした発言は2002年2月以来のイスラエルが国として常にとっている政策の一部である。このときすでにミカエル・メルキオールMichael Melchior 副外相は、フランスを反ユダヤ主義対策において「西洋諸国の中で最悪」と非難し、敵意を公にした。ある国が他の国を攻撃するときの常として、この場合のことばも一つの政治的な目的を持っている。それは、フランスの影響力を無にすることである。フランスはイスラエルの判断ではEUの中でももっともパレスチナよりの国であり、アリエル・シャロンは紛争の仲裁者としてのフランスの役割を一切否定している。そしてシャロンのこの節制を欠く発言は、イスラエルが完全に孤立させようとしているヤーセル・アラファトを最近ミシェル・バルニエ外相が訪問会見したことへの返答である。...

そしてイスラエルが実際に移民を増やそうとすればフランスは最後に残された可能性の一つだが、しかし呼びかけこたえて、実際にフランスを離れイスラエルに移住する人々の数はそれほど増えないと、社説の後半は解説する。

相手によって、反ユダヤ親アラブといわれたり、反イスラムといわれたりフランスも忙しい。

ル・モンドはこのニュースをカバーする日付のものがまだ出ていないので、今のところネット版にAFP配信の記事を掲載するにとどまっている。