ル・モンド、フーコー特集

ル・モンド19日付け(ペーパー版)にフーコー死後20周年を記念して別刷り8ページのフーコー特集。少しお金を払えば無料でPDFでダウンロードもできるので、「ファンの方はどうぞ(©id:temjinus)」。

フランス以外でのフーコー受容について2ページほど割いてレポート。全著作が翻訳されている(ほんと?)日本での「比類ない威光 rayonnment exceptionnel」を紹介するフィリップ・ポンスは、死後20年このかたのその受容に関して

その概念の円熟化、消化はフェミニスト社会学歴史学、哲学の方法論の中に神経を張り巡らしていくが、それに引き換え、刑務所や精神医学に関しては−−1980年代の反精神医学運動をという例外を除けば−−「戦うフーコー」の影響力は消極的なものにとどまった(La Foucault "combattant" aura en revance une influence plus timide)

と。

同じ印象を9月15日の日記で死刑の問題に関連して少し書いた。フーコーに限らずフランスの現代思想が輸入されるとき、アカデミックな方法論の問題だけに射程がとどめおかれ、社会問題が関わる領域−−特に自国のアクチュアルな問題との関係づけ−−がみごとに看過される傾向がどうしても目につく。この種のつまみぐい現象は、研究者(輸入業者)の社会的存在の性格に関する社会学的研究の絶好の主題だと思うが、だれかやっていないだろうか?「自己の立場の前提に疑問を投げかける」などというフランスの知識人のキャッチフレーズにそそのかされて。ブルデューあたりが立派な道具だてを用意してくれているが、そのブルデューでさえ輸入過程で上記の漂白傾向を免れていないことを考えるとあまり期待しないほうがいいかもしれない。