同性カップルの共同親権

La première famille homoparentale reconnue en France
フランス初の同性両親家族認知

AP | 22.09.04 | 20:33
フランス第一号。レズビアンカップルがその5歳、7歳、10歳の3人の娘に対する共同親権を法的に認められ、フランスではじめての同性両親家族となった。この大審裁判所の判決は7月に下りていたが、パリの検事局が上訴しなかったためこのたび確定となった。
PARIS (AP) -- C'est une première en France. Un couple lesbien s'est vu officiellement confié une autorité parentale conjointe sur leurs trois filles âgées de cinq, sept et dix ans, établissant ainsi la première famille homoparentale française.
Le jugement du tribunal de grande instance (TGI) date de juillet, mais le parquet de Paris n'ayant pas fait appel, la décision est désormais définitive.

ちょっと事情が複雑で、いささか説明が必要。実は法的な話になるともっと複雑となる。
もともとはル・モンドの記事、

La justice reconnaît pour la première fois une famille homoparentale
LE MONDE | 22.09.04 | 14h10

が出所で、法的な背景解説、問題点も丁寧に説明しているがややこしいので、概略をまとめた上のAP-NouvelObsの記事で予備知識を仕入れたから読んだほうがわかりやすい。両方をもとに事情をまとめると次のようになる。

女性2人のカップルは、姓は明らかにされていないが、名はカルラ Carla と マリー・ロール Marie-Laure。カルラ46歳、マリー・ロール45歳。学校の同級生同士だった32年前からカップルになりそのまま共同生活をするようになった。子供がどうしても欲しくなり、10年前にマリー・ロールが人工受精で子供をもうける。フランスでは独身の女性への人工受精は認められていないが、外国でおこなったものらしい。同じようにさらに2人産み、カップルは娘3人と暮らしている。このままではマリー・ロールに親権はあるが、カルラと娘3人は法的にはまったく赤の他人。カルラに親としての法的な立場を与えるために2人がとった方法は、カルラがマリー・ロールの娘を養子にすること。養子縁組の手続きが2001年に認められる。こうしてカルラが法的な親権を、マリー・ロールが生物学的母親として実生活上での親の役割を持っていたが、これをさらに正常化するために、2人が共同で法的な親権を行使できるように昨年裁判所に訴える。そしてこの訴えは、子供の利益に適うとして、このたび認められる。ざっとこんなような経緯である。

フランスは同性愛のカップルが養子をとること、カップルの2人に共同親権を与えることを認めていない。実はこれは、象徴的・政治的な意味のほうが強い同性結婚よりも、切実な問題である。というのは実際上、同性のカップルのもとに子供がいるというケースはめずらしくないからだ。ただし今回の件が、判例となってこうしたカップルにとって朗報になるかというと、ル・モンドにコメントする専門家は、今回の場合は特殊ケースを追認したものにすぎないとして、否定的である。まず上の2人の場合、2001年の決定自体が例外的ケースらしい。

さて、理論的あるいは現実として同性愛カップルに子供がいるのには次のようなケースがありうるという。まず、

  • [すでに実子がいた]男性カップルでも女性カップルでも、どちらかに前の異性間関係でできた実の子がいる場合。つまり片方が実子を連れ子としている。これはレアケース。

カップル形成後に子供がほしい場合は、

  • [養子をとる]男性カップルでも女性カップルでも養子をとる場合。同性のカップルへの養子縁組みは認められていないが、1966年以来28歳以上の独身の男女が養子をとることは可能なので、どちらか片方が養子をとる。ただし同性カップルで暮らしていることがわかると裁判所に拒否されるので、虚偽の申告をし、アパートを別に借りるなどして養子縁組みをみとめさせるところまでこぎつける。そのあと実質的な家族生活に入る。
  • [実子をつくる♂♀]男性カップルと女性カップルの2カップルで共同し人工授精による出産の異性カップルを形成し子をもうける。ただし医者が協力するのは禁じられている。
  • [実子をつくる♀]女性カップルで、上のマリー・ロールのケースのように、まったくの他人からの人工授精でどちらか(あるいは両方)が実の子を生む場合。フランスでは独身女性には禁じられているがヨーロッパの他の国で比較的簡単にできる。
  • [実子をつくる♂]男性カップルでは、もっと難しくなるが、人工授精で代理出産をしてもらう母親をみつける場合。これは金と手間はかかるが北米で可能。このあと生物学的父親であることを理由に子供を引き取る。

いずれの場合にしても、共同親権が認められない以上、カップルの片方は法的に親として認められていないわけで、場合によっては学校、病院などで実質的な問題が生じる。その不都合を解消する次善策として代理親権というものをもう片方に認めさせる動きもあるが実際にはこれもなかなか認められていないという。

実のところは個人的には、同性カップルでそこまでして子供を持ちたいという情熱があまり理解できないが、まあ個人的に理解できない感情というのはたくさんあるのでとやかく言う問題でもない。しかしあれこれの事情はあれ、実際に同性カップルのもとで暮らす子供がすでに多数いるとなれば(ル・モンドの記事では「数万家族」とする)、子供の利益を優先させるよう法律が対応すべきではと思う。実をいうと最近友人になった女性カップルに小学生高学年くらいの子供がいる。立ち入って個人史をたずねたこともなく、ママンと呼ばれる女性のほうがかつてつきあっていた男性との間にもうけた子供だろうくらいに勝手に思っていたが、可能性としてはそうばかりとも限らないことを上の記事を読んで気づいた。もっとも質問してみるわけにも、とりたてて知ろうとも思わないが。