イラク人質事件 9月22-23日

イラク、人質、殺害 などの検索ワードでたどりつく人が多い。人質殺害があるたびにおこる現象で、毎回のことながら中には「映像」というようなキーワードをつけてくる人もいる。その手のサイトへのリンクはここにはない。今朝(日本時間で23日午後)まとめておけば国内記事に少し先んじた情報が掲載できたが、そのあと午後(日本時間24日)になって国内でもほぼ情報がでそろったので、新鮮味がなくなったが、できるだけ+αになるようなまとめを心がけて、印象に残ったかぎりでざっと。

  • フランス人の2記者についての新しい情報なし。
  • 2人のNGOのイタリア人女性(2人のシモーナさん)の殺害を告げる声明が23日早朝に、「ジハド組織」と名乗るるイスラム過激派のインターネットサイトで発表。過去に知られていなかったサイトのため、信憑性を疑う向きが多かった。その数時間後に、Ansar al Zawahir と名乗るサイトにも殺害の声明。このサイトは誘拐後の9月10日に声明を発表をしていたサイト。いずれも信憑性が確かめられないまま懸念が高まる。
  • アル・ザルカウィーの組織に誘拐された英米人3人のうち2人のアメリカ人人質の殺害が発表された(1人はすでに死体が発見)たあと、22日にイギリス人人質ケネス・ビグリー氏の映像がインターネット・サイトで公開。犯人グループの要求はイラク人女性囚人の釈放で、映像では人質自身がブレアー首相に自ら訴える。イラク人女性囚人の数については当初イギリス政府とアメリカ政府で見解が違っていたが、結局「細菌博士」とよばれるリハブ・タハ氏と、「ミセス炭疽菌」と呼ばれるフダ・サリー・マーディ・アマシュ氏の2人の扱いが焦点に。イラク政府は−−人質事件とは無関係としながら−−タハ氏の保釈を検討中と発表したが、アメリカ政府がすぐさま釈放の決定権はアメリカにあり、釈放の予定はないと発表。これを受けてイラク政府も釈放検討の見解を否定。
  • イギリスでは、政府に人質助命のために2人のイラク人科学者の釈放に向けて努力するようにとのビグリー氏の家族の要請に対し、イラクは独立の政府であり、イラク政府の決定を尊重するしかない、またこの要求を呑むことは今後多くのイギリス人を拉致の危機にさらすことになるとして拒否。外相のストロー氏は残念ながら政府にできることは少ないとのコメント。家族は、アメリカは解放を妨害していると非難。さらにブレアに対しても対応が真剣でないと非難。息子や母親、いとこが犯人グループに助命を嘆願する声明を独自に発表。沈黙を守っていたビグリー氏のタイ人の奥さんも声明を発表。イギリスの主要新聞の論調は、家族の行動は理解できるとしながら、今回に関しては政府の対応を支持。ただしイラク戦争の発端さかのぼっての批判によってブレア首相の立場をさらに悪くなる。
  • アメリカではイラクのアラウィ首相が議会で演説し、「わわれはイラクで成功しつつある」と英語で宣言、熱烈な拍手を浴びる。ブッシュ大統領はアラウィ首相と会見し、イラクはよい方向に向かっていると確認、サダム・フセインがいなくなって世界は安全になったと重ねて強調。

/* アラウィ首相の訪米、演説はほとんどブッシュ大統領の選挙運動にしか見えない。現在のイラクの状況と激しいコントラストをなすアラウィ−ブッシュの態度は、人質問題で真剣に心配する人々にとっては侮辱にしか写らないだろう。このすさまじいコントランストのよびおこす印象を、インディペンデント紙の記事の次のようなタイトルがよく表している。

Parallel Worlds - On one side of the world, the Iraqi Prime Minister is applauded by US Congress and fêted by George Bush. On the other, a wife waits for the news she dreads
パラレル・ワールド 世界の片側ではイラクの首相が米議会で拍手を浴び、ジョージ・ブッシュから祝福される。もう片方の世界では一人の妻が恐ろしい知らせを待つ。

By Rupert Cornwell in Washington
Independent 24 September 2004


id:hinakiuk さんが、イギリスの世論のようすを伝え、ビグリー氏の映像でのメッセージを全訳で紹介している(id:hinakiuk:20040923#p1)。