過ぎていったニュースたち

この一週間、日記をつけ続けていれば触れることになったはずのニュースから

  • フランスの人質解放の別ルート交渉の失敗が大騒動に。 media@franchophone に詳しい記事がある。
  • イギリス人人質ケネス・ビグリー氏殺害。id:hinakiuk さんがイギリスに住む人の感情をよく伝えてくれている。
  • トルコのEU加盟交渉を欧州委員会が条件付きながら認める。加盟を認めるか認めないかについてフランスでは議論が盛んに。人権問題に関してもいろいろ蒸し返されているが、トルコは欧州評議会のメンバーであり、その意味ではすでにれっきとしたヨーロッパの国という論点が看過されていることが多い。基本的な抵抗はやはり現状での経済の問題を基本に、宗教圏の違いからくる本能的感情がからんでいるのは明らかだ。しかし政教分離の視点からいうと、フランスが「キリスト教国」でないのとおなじ意味でトルコは「イスラム教国」ではない。EU憲法の批准反対にまわった、社会党のファビユス元首相がこの件についてもノーに回る。
  • ジャック・デリダ、死す。4か月ほど前に講演会で見たのがこの人の姿を拝む最初で最後の機会になった。はてなの書き手で講義に出た方が複数いるはずだが、そういう方には感慨が大きいことだろう。id:temjinus さんがル・モンドの記事を詳しく紹介してくれている。この1週間詳しく日記をつけていてなおかつ id:tristano さんがいれば、今ごろ改めてLe monolinguisme de l'autre の話で盛り上がったかも知れないと思いながらも、軽々しく何か書く気になれない。7月に書いた怪しげな「デリダファン」に向けて書いた戯れ歌を今読むと本人に対しても不謹慎なので削除。
  • エルフリーデ・イェリネクノーベル文学賞受賞。id:temjinusさんが詳しく紹介している。今年は女性が受賞という予想を紹介する記事がTV5掲載のAFP記事に出ていたが、イエリネクの名前は見かけなかったような気がする。彼女のファンで受賞を喜んでいる書籍界に詳しいある女性と話していて、あの「la pianiste」は読んだと言ったら、「ドイツ語で読まなければだめよ」と一蹴されてしまった。独仏バイリンガルの彼女がドイツ語版、フランス語版の両方を読んだ上でのご託宣で、拝して聞く。しかしフランス語版でも時間関係や内語と叙述の関係が入り組んでいてかなりややこしかったという印象があり、とても原本に向かう勇気はない。日本語の翻訳はどんなものだろうか。ノーベル文学賞の受賞者を当てるのが自分の職業上の手柄を左右するような仕事をしているその女性からノーベル文学賞についてのいろいろと面白い話を聞く。彼女の意見ではドイツ語圏の女性作家ということではクリスタ・ヴォルフがほんとうはまず真っ先に「とらなければならない」のだが、ドイツからは1999年にギュンター・グラスがすでに出ているのでしばらくドイツ出身の作家はあと回しになっているのだという。ギュンター・グラスが自分の受賞が決まったときに、「ほんとうならクリスタ・ヴォルフが先に取るべきだ」と言ったという話を教えてくれたが、確認はしていないので真偽は保証しない。
  • 中国におけるフランス年に合わせた、シラク大統領の中国訪問。大統領の訪問によってエアバスの契約がとれたとかとれないとか、でもTGVはだめらしいとか、これまでの契約高がいくらになったとかというようなTVの報道を見るたびに、ドゴールが池田勇人首相に会ったったあとで「まるでトランジスタのセールスマンのようだ」と評したとかいう逸話を思い出し、「まるでエアバスのセールスマンのようだ」ということばが反射的に浮かぶ。しかし、私にとっても、たぶん多くの人と同様、今年は認識の上での中国元年として将来思い出されるだろう。例を挙げればきりがないが、身の回りで起った象徴的なことを一ついえば、知り合いのいるある高校で、語学選択の日本語の授業が廃止され、中国語が新設になった。いままで日本語をやっていた知り合いの息子が来年からは中国語をやると言っている。