コートジヴォワール情勢(続き)

解説めいたことを書くのも面倒になってきた。

国際社会の動きや、仏語メディアだけでなく英語圏も含めた通常の報道で常識になっている現実認識と、日本のブログ、掲示板等での見方の差を埋める試みが。後者に基本的な事実関係の確認、現実としてとり得る政治的選択についての判断を抜きに、旧宗主国と旧植民地国の戦いのような既製品イデオロギーだけで済まそうとする省エネ的態度が目立つ。ほとんどその小世界でしか通じない論理。その論理では、安保理が全会一致でフランスの行動を支持したこと、アフリカ連合の今日のアジス・アベバでの安全保障会議でも議長談話として国連安保理に名を借りる形で同様の支持を与えたことの基本にある共通の理解の上で、人々と議論することができない。しかし、イデオロギー的枠組みが決まっているところで解説を試みても、「フランス寄り」の論をはっているような目でみられては、いくら気をつけてやってもあまり意味がないと空しさを感じる。というよりそこまで気を使うのがばかばかしい。

Google Japan News で見ると産経、赤旗も含めて、それぞれニュアンスのおきどころに差はあれ新聞はほぼ過去の経緯を踏まえた客観的な報道になっている*1。大マスコミ批判をこれまでたびたびしてきたが、こういうとき逆に、一応専門家のいる大新聞とつけ焼き場で何でも「斬る」ネット評論の差を感じる(自戒をこめて)。60人からいるはずの邦人居住者の安否を気遣う声がほとんどないのも気になる。

日本語で読めるいくつかの記事は昨日紹介した。内戦になったときの近隣諸国への影響については、火曜日にモーリタニアに出発される temjinus さんが id:temjinus:20041108#1099901968 を新たにアップされた。

◆追記 media@francophone で、8日づけリベラシオン L'impasse de Marcoussis の翻訳「コートジボワール情勢:和平合意が破綻するまで

フランス語の新しい記事で目につくのは−−あとは自分のためのメモなので詳しい紹介は割愛させてもらうが−−今回の爆撃−報復にいたる最近の経緯を説明したリベラシオンの「Comment la France a été prise au piège ivoirien フランスはいかにコートジボワールで罠に陥ったか」、互いに武器を収めようとしない勢力の間に立ち、ためにされる「ネオコロニアリスト」批判の中で平和維持活動にあたる困難さと、あくまでも国連に代表される国際社会とともにそれをやりきる意義を説くル・モンドの社説「Pyromanes ivoiriens コートジヴォワールのマッチポンプ」。

Jeune Afrique が主にAFPによりながら刻々と情勢を伝える。また allafrica.com では、コートジボワールの政府系の新聞を含むアフリカ各国の新聞の記事。

*1:一つの気になる例外は東亜日報の「アフリカのベトナム」題するコラム。総説的になされるフランスの植民地主義的過去やそれを引きずる政策についての批判には賛同もできるが、今回の事件と短絡的にそれを結び付けた見解の部分は、掲示板の書き込みなどと等しく、事件直後のバグボ政権のスポークスマンのようだ。仏語のものをみた限りだが、アフリカ諸国の新聞でさえ−−バグボ政権の宣伝を知っているからアフリカ諸国の新聞は、といういうべきか−−こんな論はなかった。皮肉なことに「ベトナム化」云々の脅しをかけたクリバリ国民議会議長は今日になってアビジャンの治安維持のためにコートジボワール軍とフランス軍の協力を申し出ている。