著者と印税とアフィリエイト

id:yskszk さんが、自分の著書『Winユーザーのための自作Linux』ソフトマジック、2003)を紹介しながら(id:yskszk:20050603)

未払い分の印税をアフィリエイトで浅ましくまかなうためにも、みなさま、ぜひともお買い上げくださいませ。

Linuxに手を出すときには」としかお約束できないが、印税とアフィリエイトの関係で、著者一般の心理について、思うところ少し。

アフィリエイトによるとり分も、印税のとり分も契約によりいろいろだろうが、その金額をくらべて、前者が後者の3分の1から場合によっては半分くらい、特別な場合には前者が後者と同じくらいになるケースも想定できそうだ。翻訳で翻訳印税をもらう場合、さらにその比が前者に有利になることが多い。そこで、自分で百ページ以上、場合によっては数百ページになる本を、艱難辛苦して書いたり翻訳して、そこから1冊売れていくらの印税を受け取っている人が、自分のブログやサイトのなんらかのページにその同じ本の写真を乗せリンクをはり、だれかがクリックして買うだけでそれの数分の1から同等の金額をうけとった場合の、心持ちはいかにというもの。

もちろん印税は売れた本−−あるいは刷った本−−全部について入ってくるのに対し、アフィリエートは自分のリンクを経由したものだけになるから、総額としてはその比にはならないが、それにしても、本が一冊売れたときの取り分で、隅から隅まで書いた作業に値するものと、リンクがプッチンされたとき−−もちろん売れないといけないが−−のものが、桁も違わないというのは、何かましゃくにあわないような気がしないだろうか。もっとも一冊の本の売り上げの、書店の取り分と著者の取り分とでも、似たような比較がなり立ち、流通の利潤が生産の利潤より高いことをまじに嘆くのは、ちょっと鼻持ちならないのではあるが。

自分の本でないばあいにケースを拡大して、たとえば、適当な数行解説とともに300冊分のアフィリエートをもつ300のネットのページ(あるいはカラム)を用意することはできる。その本を読んでいなくても。これを作るエネルギーと、300ページの本を書いたり、翻訳したりする作業のエネルギーを比べたときの比はどのくらいだろうか。前者が10分の1の以下のエネルギーでできるということは十分にありそうに思うが、その300ページが1年に生み出すアフィリエートの金額総計が、自分で300ページの本を書いたり翻訳したときの印税の1年間の回収分の10分の1以上ということはあり得るだろうか。後者があまり売れない学術書、前者が売れ線の本をねらった場合、十分にあり得るどころか、比が10対1ではきかないような場合も大いにあるような気がする。

世の中がそんなしくみになっているとすると、純粋に経済的利潤だけを考えれば、ひいひいいってコンテンツ作ろうという人にはあまり勇気のでる話ではない。アフィリエートで何万円も儲けたという話を目にすると、そんなことを考えてしまう。本だけではないが、ライブドアの話が盛んで、アフィリエートのうまみが喧伝されたころも、ちょっと思った。もっともアフィリエートも実際はそんなにばら色ではないらしいが。