最初の容疑者情報

昨日の記事で紹介した事故翌日の朝Europe1→NouvelObsがすっぱぬいた、ロンドン警視庁が行方を追っているという有力容疑者名が、イギリスの新聞でもいっせいに報道され、ル・モンドでも一面になっている。Europe1の情報は正しかったことになるが、あきらかに捜査の進展を慮って慎重な英国のメディアより一日も前に、捜査に関わる重要情報をすっぱ抜いたのが適切かどうかは議論の余地があるところだろう。事件発生直後から、英当局の公式発表に関するもの以外は、イギリスのメディアよりもフランスのメディアのほうが情報が早いので奇妙な感じがしていたが、センシブルな点についてはイギリスのメディアは報道を自己統制しているもようでこれは当然と言えた(これは必ずしも非難するべきことではない)。
昨日のコメントで、イスラム過激派が犯人だったばあい、英国を本拠とするパキスタン系と大陸側を本拠とするアルジェリア・モロッコ系の二つの線が考えられていると書いたが、これに加え、イラク戦争以来イラクに集結しているイラク系という新しい流れもとりざたされているとも書くべきだった。この可能性についてル・モンドやリベの記事でも専門家のコメントを載せている。

ところでこのイラク系が今回の事件に関与しているかどうかだが、CNN.co.jp では上の英国・フランス情報に対応する

のほかに、

がさっさと報道されているが、イギリス、フランスの新聞では今のところ後者の情報は目にしていない。後者のニュースソースについてCNNが「ロンドン同時テロの捜査に協力している米国のテロ対策当局者」、産経新聞が「米高官」としている。

今回のロンドンのテロも含めてイスラム過激派による欧州でのテロの動きについて、フランスの専門家や当局の大方の見方では、イラク派兵問題は、問題を複雑化した+αの要素でこそあれ、直接の原因ではない。ざっと見た限りでは、イギリスのメディアもこの線にあるように思う。そしてこれは派兵の責任問題や撤兵問題についての議論が急激に白熱化しないためにもブレア政権にとって都合がいいことなのだが、逆に早急にイラクの状況と関連づけようとするアメリカの「テロ対策当局者」や「米高官」は何を考えているのやら。イギリスの世論をイラク駐留に向けてさらに引き込もうという意図だとすれば、単純にすぎる。事実関係についてはちゃんとした検証が必要だが、もし「イラク系」の活躍や他派との連携が確認されたとすれば、そういう恐ろしい状況が出てきた原因、その過程については今後議論が起こるだろう。