ラッパー・フィンケルクロート

アラン・フィンケルクロート Alain Finkielkraut のフィガロのインタビューを L'écume des jours の shiba さんが訳してくださっていて、その悲憤慷慨調をよく写した訳になっている。中身はかなり凄い。が、実はもっと凄いのがある。RCJ (La Radio de la Communauté Juive)で放送されたインタビューの録音で30分ほど。
http://www.radiorcj.info/reecouter_detail.tpl?sku_arch=31797245572153131

9.11以降のフィンケルクロートの言説は完全にコミュノタリズムに囚われていると私はみるが、これは「身内」向けだけに、暴走度が凄い。アポカリプス、ポグロム、人種暴動などのことばが、ばななのたたき売りみたいにでてくる。

一応少しは名をなしたことのある哲学者なので、Shibaさんも猫屋さんもひきながら、批判も上品にしているが、私があえていえば、このインタビューのフィンケルクロートはル・ペンすれすれどころか、そのセンセーショナリズムにおいてすでにル・ペンを越えている。

私は語られた言葉より、語っている声の調子でその人の思想を判断するという、知的には欠陥のある習性があり、インタビューを聴くのが好きなのだが、内容、調子ともに、この30分近くあるインタビューを最後までがまんして聴くのは辛く、最後はかなり I feel sick だった。フィンケルクロートが何か言っているというので先週だったか聴きにいって、これはもう触りたくない世界だと思ったのだが、Shibaさんが今度訳してくれたフィガロのインタビューにざっと目を通してみて、思ったのは、11月6日のインタビューとフィガロの11月15日のインタビューの内容がほぼ同じだということ。つまり騒動の情勢の変化に応じて、思考に変化がなく、完全に暴動初期の段階から視点が固定されている。

このインタビューで拾いものがないことはない。フィガロのインタビューにも出てくるようにフィンケルクロートはラップの歌詞をやり玉に挙げているのだが、ラジオではあのバリトンのたたみかけるような調子で朗読してみせてくれるのが聴ける(3分半と4分半の間あたり)。中年ラッパーとしてなかなかに資質があると思う。これをサンプリング、リミックスしてラッパー・フィンケルクロートを勝手にデビューさせれば面白かろうと思うが、かかる手間に比べて聴いてくれる人が少ないのが難点だ。

ラジオのインタビューのはあまり多くの人に触れないので、それほど話題になっている気配はないが、イスラエルの新聞、Haaretzに11月17日に載ったやつ(英語版)は、外国の新聞に違う言語で乗るときの単純化のフィルターを通すことによって、また凄いことになっているので、かなり物議を醸している...と書いて今チェックしたら MRAPが「人種的憎悪挑発」で訴えるというニュースが飛び込んできた。いやはや。