買われた「自由・平等・博愛」@Google.fr

昨日の記事を書いていて必要があって、Google.fr で liberté (自由)を検索すると、右側に サルコジ・UMP の広告が出ているの気がついた。

UMPは党内の他の政治家からも文句がでるほど今やほとんどSarkozyの大統領選挙宣伝マシンと化していて、さまざまなマーケティング作戦を繰り広げている。この Google 広告作戦については、バンリュウの騒動初期の11月初頭から知られていて*1、このときは、émeutes(暴動)、racaille(くず)などのキーワードに広告がリンクされていた。これは一週間ほどで終って、今はこのキーワードでは出ないというのは知っていたが、なんとこんなところで復活していた。

もしやと思って égalité(平等) と入れると結果は同じ。franternité (博愛)についてはいうまでもないだろう。ほかにいろいろやってみると、 前にあった sécurité は残っていることがわかる。

しかし、最大のヒットは、ほんとうにもしやと思ってやってみた "parti socialiste" (社会党)。たしか、ライバル企業の名称のキーワードを予約して検索時の広告から自社に消費者を導くというやりかたについては、裁判もあって今もめているはずだが、その手法をそのまま導入していることになる。


どこかニュースで話題になっているか検索してみると、すでに NouvelObs が11月24日の記事でとりあげている。そこに、どこからリークされてきたのかキーワードリストがある。

gauche / l'express / nouvelobs / figaro / chirac / droite / fraternité / insécurité / sécurité / villepin / jospin / nouvelobs / de villiers / liberté / égalité / sarkozy / sarko / syndicats / politique / parti / ocialiste / démocratie / libé ral / adhérer / militant / neuilly / actu / congrès


この中で socialiste よりも傑作なのは、nouvelobs が対象キーワードになっていることだろう。プレスの名前には他に、figaro, l'expresse が入っているが、 NouvelObsが今回の事件で特にサルコジ氏に批判的なこと、しかもこのマーケティング政略を暴露する記事を載せる当の雑誌というのが皮肉だ。Libération はすでに同紙が取得している。 Le Monde あるいは "Le Monde"では広告は何も表示されない。

社会党の元首相・元大統領候補の Jospin が入っていて広告は右欄でなく、検索結果のリストの上方に出る。社会党現党首の Hollande はリストにはいっていない。なめられたものだ。ル・ペンのソフトヴァージョンと言われる De Villiers が入っている。どこから票が欲しいかみえみえだ。Le Pen, Front National は入っていない。そのくらいの恥はあるようだ。

とにかく今や、テレビを見ても、ラジオを聴いても、ネットで検索しても Sarkozy が目から耳からはいってくることになる。もはや書いてある内容に関係なくこういう記事もすでにそれに協力しているわけだ(フランス人は見ないけど)。確固たる政治的意見を持たない人にはほとんどサブリミナルの世界。かつてフランスの政治家がここまでなりふりかまわぬ連呼作戦に出たことがあるか、自問している。フランス生活大先輩の猫屋さんや、大大先輩のid:temjinusさんの感想もきいてみたい。

上のNouvelObsの記事中、このマーケティングにはじめて注意を喚起したCroacという運動グループが、どんどんクリックして UMP の財布を早く空にしようと訴えているが、どのくらい効果があるか。

しかし Sarkozy-UMP が「自由・平等・博愛」を金で買うのも無理はないと思う。「自由・平等・博愛」を今いちばん、何かにすがるように繰り返しているのはバンリュウの多少なりとも目覚めた若者たち。そして前者の陣営が実際の言説で繰り出す概念は、これに代わって、ほとんど「労働・家族・祖国」もの。これについては項を改めて。