トッドのフランス知識人批判(temjinusさんに教えてもらった)

fenestrae2004-07-12



temjinusさんがエマニュエル・トッドの『狂人とプロレタリア Le fou et le prolétaire』の読書ノートを旧サイトから続けているのを楽しみに読んでいる。『狂人と...』は1979年の出版で、翻訳はなく原著も絶版なのでこの紹介は貴重。


以前の紹介文にも出てきたが、フーコードゥルーズガタリブルデューといった当時のフランスを代表する知識人に対する舌鋒が鋭い。皮肉が利いていて、思わずニヤリ。今回の紹介分はフーコーブルデューが標的で分析もつく。1979年ということはトッドが28歳。挑発が好きな歳とはいえるが、ある程度の自信としっかりした視点がないとここまではなかなか言えない。英語圏で高等教育の続きをやったフランス人が、新たに獲得した基盤を持って、パリの一部地区に集う知識人・学者の「ディスクール」のわけのわからなさに対して、鋭い批判を投げかけるのをいくつかの例見聞きしたが、その代表例といえるだろう。


この本のこうした部分に当時どういうリアクションがあったのか気になってネットで調べてもよくわからない。そもそもこの本への言及がほとんど見られない。この手の「挑発」を含む本は何かの拍子に有名になればミニスキャンダルになって、ぼこぼこに叩かれる著者を有名にするか(これは若い野心ある書き手が論壇への入場チケットを手にするためにとるクラシックな戦略の一つだ)、そうでなければ黙殺されるのかのどちらかだが、不幸にして後者だったのかもしれない。ブルデューの主著となる『ディスタクション』の出版がやはり1979。トッドの揶揄は『ディスタクション』をも含めてのものだろうかとか、そのあとのブルデューの仕事に対する彼の評価はどうなのかというあたりも興味深い。あまりに一刀両断だから、フーコーは英語で発表されたインタビューのものを読めばまともな骨組みが透けてそれほど分裂症でもないぜ(あまり弁護になっていないか...)とか、哲学的ディスクールに対するニッチ的大衆市場形成というような説明はむしろブルデューの目のつけどころに近いんじゃないかいとか、逆に言ってみたくもなる。いずれにせよこの本に対する興味ががぜん増したので、古本でもいいから手に入れようとう思って探したが、フランス最大の古書店ネットワークにもない。わざわざ図書館に行って探すしかないとなるとちょっと優先順位が下がる...

↓下に続く