ちょっとフォロー(フランス語のことなど)

23日の日記に書き入れた、「ちょっといわせてくれぇ」に何人かの人が触れてくれた。そのせいかもしれないが、アクセスが一挙に増えた。と同時に、「ちょっといわせてくれぇ」で意図的に挑発的に書いた部分だけが一人歩きすることを恐れるので少しフォローします。

新聞(代表的な例としてル・モンド)がちゃんと、ある程度の速さで読めなくて云々というくだりは、読む人によっては、意地悪な言い方に聞こえたかもしれない。そうしたことに必要性は感じているがそのための糸口が見つけられない人や、これから勉強しようという人の意をくじくことが本意でないのはいうまでもない。ただ、前提からしてその能力が必要とされる「専門家」が、いつの間にその必要性さえ忘れたり、場合によっては開きなおってしまうこと、そうした必要性を緊急と思わない常態が、若い世代にも受け継がれる空気には、だれかがはっきりそれはマズイといったほうがいいし、それによって、もっと多くの人が実際の社会事象を具体的に扱う文をもっと読み話のネタにするきっかけになればと思ってあんな文を書いた。

もう一つ補足しておきたいのは−−新たな誤解を生まなければいいが−−ル・モンドの文章というのは、それほど難しいものではないということだ。「高級紙」*1という言葉が誤解のもとのようだが、フランス語の点では、特に日本人にとっては、実はリベラシオンなどよりル・モンドのほうが易しいはずだ。リベラシオンの文章がおやじギャグやプチインテリ好みの隠語、学生言葉からきたラテン語、意図的な俗語表現などを使って修辞効果を狙い、そのニュアンスを十分に汲み取るにはフランスの文化の裏側にも精通していることを要求するのに対し、ル・モンドは特定のコラムを除けば、文脈依存度の低い標準的な表現を用い、外国人が学校で習うフランス語でよりアクセスしやすいものになっている。

案ずるより生むが易しで読んでみてはどうだろうか。たとえば今、読者のお勧め第一位になっている次のものは、いインタビュー記事(元バダンテール法相)で、文も複雑ではない。

Badinter à Sharon : des mots "outrageants pour la République"
バダンテールからシャロンへ −− 「共和国を侮蔑する」ことば
LE MONDE | 22.07.04 | 13h25

これに限らず、読むための環境は昔よりずっと整っている。だいたいネットで簡単に読めるだけでも幸運なことだ。また「はてな」で temjinusさんの日記は、いろいろなニュースをを、親切な語学的配慮とともに紹介してくれている。

(この話続く)

*1:英語のQuality Paperの訳であろうが、フランス語では通常 Journal de référence レフェランス・ペーパーと呼ばれる。標準的な典拠として参照できる新聞というニュアンス。