ラスト・エンペラー

ところで、日本の天皇をフランス語で Empereur、英語で Emperor と訳し、日本人でもRoi、Kingとは違うのだとこの語に嬉々と拘る人も多いが、個人的には気恥ずかしくてしょうがない。自分のことじゃないけど一応その「臣民」として。

エンペラーの類は二度の大戦で世界史からほぼ消えて、現代世界で元首をエンペラーと称していたのは1970年代までのエチオピアと、あと中央アフリカのボカサくらいだったはず。現代世界におけるエンペラーの語感はそんな例とだぶってしょうがない。アフリカを見下すわけではないが、現存のエンペラーの称号のこんな滑稽な語感に気づかない人も多いのではないだろうか。

そもそも roi, king と区別して empereur, emperor の語を使用するのは主として、古代的専制専制君主を指すばあい、複数の国の王を兼ねる帝国の長を指すばあい、由緒ある王族の血筋をもたない僭主が称するばあいだと思うが、日本のそれはどのイメージにだぶらされているのだろうか。個人的な語感では、イギリスやベルギー、スペインなどのようにroi, king のほうが滑稽感がなく、血脈由緒正しくまともに偉そうな気がする。